torum

主に開発中のアプリにまつわる技術系の事。

「ビットコイン・スタンダード」を読んだ

しばらく前に、経済学者のセイフディーン・アモス(Saifedean Ammous)氏による、"The Bitcoin Standard: The Decentralized Alternative to Central Banking" という本を読みました。

日本では、ビットコインだの「仮想通貨」だの言うと怪しげなモノ扱いする人が多く、しかも大手メディアでは「億り人」だの「数字転がしの金儲け」的な取り上げ方ばかりされてきたような気がします。実際、検索してもアフィリエイト目的の宣伝記事やら煽り記事が多すぎて、正直ウンザリ、といった所です。

恐らく、そういった風潮が「暗号通貨」(暗号資産・仮想通貨)に対する日本でのネガティブなイメージに貢献してしまっているのではないかとも思います。

www.coindeskjapan.com

そもそも、英語圏では、「仮想通貨」ではなく「暗号通貨」と呼ばれています。

さらに悪い事に、日本のIT企業はと言えば、「ブロックチェーン」というバズワードに乗ってここぞとばかりに意味のない事をぶち上げて自社の宣伝をする、という無意味な事ばかりしています。アホです。ブロックチェーンビットコインを構成する内の単なる一つの技術に過ぎず、なんでもかんでもブロックチェーンにすれば良いという訳じゃないのです。

ブロックチェーンで自社サービスにユーザーを囲い込みしよう、なんて考えている企業があったらそれこそ笑いものです。なぜなら、ビットコインの成功は、企業や政府による中央集権的な管理の余地を徹底的に排除した、純粋なP2Pで自立的というかDecentralized(非中央集権的)に動くシステムを実現したところにあるからです。

ビットコインの特性は、「暗号」と「ブロックチェーン」と「コンセンサスアルゴリズム」の3つを組み合わせて使った、非中央集権の分散型マネタリーシステム、という点です。

日本では表層的、下劣、矛盾、または無意味な議論や宣伝ばかりで、本質的な情報が少なすぎる気がしています。本来のビットコインの技術的な側面や、金融システムに与えるインパクトは知れば知るほど深いもので、ビットコインの「発明」はつくづく偉大なのです。

 日本でよくある誤解として、「電子マネー」としてSuicaPASMOやらPayPayだとかと一緒くたにして同列に語るケース。これは論外で・・・それらはあくまでも日本円であって・・・色々とガックリしますねそういう議論は。(補足記事を書きました

あと、日常的に使う(支払い)通貨としてはちょっと・・・という話しもありますが、時間が解決する問題だと思っています。それに、現在の所、ビットコインは日常的な支払いというよりか、「価値の保存」という側面で語られ(ナラティブ)る事も多くなってきています。金融緩和で現金の価値が下がる時に備えるインフレヘッジとかの意味合いで。

あと、実態が無いとか裏付け価値が無い、とか言う議論も良く聞きますが、価値があるかないかは人々が決める事であって、この本を読んでもらえれば、そもそもの通貨の歴史からその「価値」について説明してくれています。

もし、アフィリエイト目的や、バズワードに乗っかろうとするだけの情報をスルーして、難しい技術的な話しは抜きにして、ビットコインの本当の意義を知りたい、という場合にこの「ビットコイン スタンダード」という本は最適だと思います。技術的な難しい話しは出てきません。寧ろ、経済学的、社会的影響の話しが主です。

残念ながら、現在まだ日本語訳が出ていないのですが、著者のサイトを見ると既に日本の出版社と契約しているそうなので、いつか日本語訳が出ると思われます。(それにしても英語版は2018年4月出版なのに、日本語訳だけが遅いってのは日本も落ちたもんだな・・・と感じさせられます。中国語版も韓国語版もとっくに出ているのにも関わらず)

要約は、以下のビットバンクの記事が良くまとまっていると思いますので、是非ご一読を。

markets.bitbank.cc

 

ま、要するに、金本位制を止めて各国政府がじゃぶじゃぶお金を刷れるようになって不健全になってしまった現在の金融システムに対しての(発行量に明確な制限のある=希少性のある)ビットコインの有用性を説いている、という事かと理解しています。平たく言うと、インフレ・ヘッジ。日常で使う通貨というより基軸通貨的な、もしくは裏付けとするゴールド的な、新たな役割を果たしていくのでは、と。

自分はさすがに世界が「ビットコイン本位制」になるとは思いませんが、国際的な準備金や庶民の通貨安防衛(ヘッジ)手段としては良いかもですね。経済については素人なので、あまり深くは語り(れ)ませんが、まぁ現在のお金ジャブジャブの状況はいかにも不健全ですよね。

個人的にビットコインに魅了されたのはその技術的側面で、ビットコインのホワイトペーパーにもある通り、「第三者(信用=銀行等)を必要としない」「非中央集権で真のpeer to peer」の金融システムという点です。これを、「暗号」と「ブロックチェーン」と「PoWでの合意形成」という組み合わせで実現したのが本当に革新的。インターネットの登場ぐらいにインパクトがありました。

インターネットというものが、情報発信を既存のメディアだけでなく個人にも可能なように一種の民主化をもたらしたのと同様に、ビットコインは一部の機関に特権的に握られている金融システムを、個々の個人にも開けたものにすると考えています。

日本では株式市場は未だに東証が事実上の独占状態で、一部の証券会社やヘッジファンドなどは東証に直接接続してミリ秒単位の取引を機械取引でプログラム化しているのにも関わらず、一般個人にはそういう手段は用意されていませんし。以前も書きましたが、暗号資産は既に個人がAPIでアクセスして自由にプログラムで取引できる環境になっているにも関わらず。

torum.hatenablog.com

まぁ、何にしろ、ビットコインに代表される暗号資産について、何を語るにも、買う買わないにしても、よくよく調べて、勉強してからにして欲しいと思う訳です。

因みに自分はチキンなので、レバレッジ効かせて云々とか論外で・・・お小遣い程度しかHODLしていないです。ま、自分専用に作ったアプリがAPIで勝手に色々やってるけどw