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「仮想通貨」は止めて、「暗号通貨」と表記しよう

日本では、メディア報道も含めて以前はビットコインなどを指して「仮想通貨」と表現するのが一般的でした。

「仮想通貨」という表現をいつだれがどのような文脈で使い始めたのかはとりあえず置いておいて、インターネットで使う「バーチャル」なもの(大抵ネガティブで見下したカノテーションがあります)、という意味合いでしょう。

しかし、資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)によって、去年(2020年)から法令上、「仮想通貨」は「暗号資産」へ呼称変更されました。よって、現在、日本の大手メディアでは、「暗号資産(仮想通貨)」というカッコ付きの表記が使われています。

金融の規制や法的な観点からすると、確かに「新たな資産クラス」という意味で、「暗号資産」、という呼び方は正しいと言えます。まぁ、金融当局からすると、「法定通貨との誤解を生みやすい」から「通貨」とは呼びたくない、というのが本音なのかもしれませんが。

ただ、「暗号資産」という呼称は本来のビットコインの特性を正しく表しているとは思えません。また、日常的に呼ぶ呼称としても違和感があります。例えば「円」は「現金・キャッシュ・法定通貨」などと色々な呼び名がありますが、普段使いで「法定通貨」などとは言いません。

じゃ、海外ではどうしているのか、というと、英語圏でも別に「暗号資産: Crypto Assets」という呼び名が一般で使われているという訳ではありません。もちろん「仮想通貨」でもありません。普通に「暗号通貨: Cryptocurrency」です。会話では略して「Crypto」なんて言ったりします。

ビットコインの特性は、「暗号」と「ブロックチェーン」と「コンセンサスアルゴリズム」の3つを組み合わせて使った、非中央集権の分散型マネーシステム、という点です。

そういう特性から、「暗号通貨: Cryptocurrency」が最もビットコインなどの特性を正確に言い表している、と言えます。

「仮想通貨」という呼び名の何が悪い、という事でもないのですが、元々日本では「バーチャル」なものというのは大抵「現実社会では通用しない」、といったニュアンスのネガティブで見下した文脈で使われてきました。

そもそも、日本では、単なる「電子的に支払う」という決済手段の話しを「電子マネー」と呼んでしまったりするのでさらに混乱します。手段を通貨と混同してしまっているのです。電子マネーと言ってもあくまでも法定通貨である円である事に変わりありません。頭が痛くなります。・・・が話しが逸れるので、それはまたの機会に補足(書きました)

ビットコインは、大きな枠組みでは、デジタル通貨・電子マネーの一種でありますが、その他のデジタル通貨などと区別して、ビットコインを「仮想通貨」と呼ぶのは、それが持つ革新的な特性に限定した分かり易い呼び名とは言えません。「仮想通貨」というのは、いわゆる「ゲーム内通貨」などを含めた、カテゴリーを表す総称なのです。

英語版のWikipediaでCryptocurrencyの項を見てみると、

Cryptocurrency - Wikipedia

Not to be confused with Virtual currency.

と、暗号通貨を「仮想通貨と混同しないこと」という但し書きが初めに表示されます。つまり、「暗号通貨」と「仮想通貨」という言葉を明確に区別して定義している事が分かります。

「仮想通貨」と「暗号通貨」の違い、また相互の関係性をもっともよく表した一文があります。

A cryptocurrency is a digital currency using cryptography to secure transactions and to control the creation of new currency units. Since not all virtual currencies use cryptography, not all virtual currencies are cryptocurrencies.

つまり、

暗号通貨は、暗号(Cryptography)を用いて、セキュアな取引と新規の通貨単位生成をコントロールするデジタル通貨の事である。仮想通貨がすべからく暗号を用いているという訳ではないので、仮想通貨がすべて暗号通貨であるとは意味しない。

という事です。

参考までに、英語版のWikipediaの関連する呼称の定義部分をそれぞれ以下に、簡単に訳しておきます。

 

Digital currency (digital money, electronic money or electronic currency) is any currency, money, or money-like asset that is primarily managed, stored or exchanged on digital computer systems, especially over the internet. Types of digital currencies include cryptocurrency, virtual currency and central bank digital currency. 

 

デジタル通貨(デジタルマネー、電子マネー、電子通貨)とは、通貨、お金、またはお金のような資産全般を指し、主にデジタルコンピュータシステムで特にインターネット越しに管理・保存・交換されるもの。デジタル通貨のタイプとしては、暗号通貨、仮想通貨、中央銀行発行デジタル通貨などが含まれる

 

Virtual currency, or virtual money, is a type of unregulated digital currency, which is issued and usually controlled by its developers and used and accepted among the members of a specific virtual community. In 2014, the European Banking Authority defined virtual currency as "a digital representation of value that is neither issued by a central bank or a public authority, nor necessarily attached to a fiat currency, but is accepted by natural or legal persons as a means of payment and can be transferred, stored or traded electronically". By contrast, a digital currency that is issued by a central bank is defined as "central bank digital currency".

 

仮想通貨(または仮想マネー)とは、規制を受けていないデジタル通貨の一形態であり、開発者により発行され、通常コントロールもされており、特定の仮想コミュニティ内で受け入れられ、使用されているものである。2014年に欧州銀行監督局が「中央銀行や公的機関の発行によるものではない、法定通貨に裏付けのあるとも限らない、がしかし自然人(個人)や法的人格(企業など)に支払い方法として受け入れられ、電子的に移動、保存、取引される電子化されたもの」と定義した。対照的に、中央銀行によって発行された電子通貨は中央銀行発行デジタル通貨(central bank digital currency, CBDC)という。

 

A cryptocurrency, crypto-currency, or crypto is a digital asset designed to work as a medium of exchange wherein individual coin ownership records are stored in a ledger existing in a form of a computerized database using strong cryptography to secure transaction records, to control the creation of additional coins, and to verify the transfer of coin ownership.[1][2] Cryptocurrency does not exist in physical form (like paper money) and is typically not issued by a central authority. Cryptocurrencies typically use decentralized control as opposed to a central bank digital currency (CBDC).[3] When a cryptocurrency is minted or created prior to issuance or issued by a single issuer, it is generally considered centralized. When implemented with decentralized control, each cryptocurrency works through distributed ledger technology, typically a blockchain, that serves as a public financial transaction database.[4]

Bitcoin, first released as open-source software in 2009, is the first decentralized cryptocurrency.[5] Since the release of bitcoin, many other cryptocurrencies have been created.

 

暗号通貨とは、交換媒体として機能するよう設計されたデジタル資産の事であり、個々のコインの所有権の記録はコンピューター化されたデータベースという形の台帳に保存され、強力な暗号によって、取引履歴の安全性が保障され、新たなコイン生成がコントロールされ、所有権の移転が確認されるものである。暗号通貨は物理的な形態(紙幣など)を持つものではなく、一般的に中央権者によって発行されるものではない。 典型的な暗号通貨は分散的(非中央集権的)にコントロールされており、中央銀行発行デジタル通貨とは対照的なものである。暗号通貨が生成される時、または発行前の生成時、または特定ユーザーから発行される時、それは一般的に中央集権的とされる。非中央集権的なコントロールが実装された時、個々の暗号通貨は、分散化した台帳技術(通常はブロックチェーン)を通して、パブリックな金融取引データベースとして機能する。

ビットコインは、2009年にオープンソースとしてリリースされたものであるが、これが史上初の非中央集権的な暗号通貨である。ビットコインの公開以来、様々な暗号通貨が生まれている。

 

日本語版のウィキペディアの関連する項は、情報が古いだけでなく、ごちゃごちゃで整理されていなく、色々な面で破綻してますね・・・。あ~、自分でウィキペディア編集というか英語版から翻訳してみるかなぁ・・・面倒だ。(<少しウィキペディアを修正しておきました)

 

続き:

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